法律Q&A

PMIとは?

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A取引実行後の統合活動のことをいいます。


M&Aは、株式譲渡契約等の締結及びクロージングがゴールなのではなく、むしろそこからがスタートだということを強く意識する必要があります。

ある調査によると、M&Aで成功するのは全体の20%~30%程度であると言われています。もっとも、何をもって成功・失敗とするのかによってこの数字は大分変ってくるのでしょうが、少なくとも、事業承継型ではなく事業拡大型のM&Aにおいては、買収後の企業価値が実際の買収価額を上回ることは、当該M&Aが「成功であった」と評価することの必要要件であることは間違いないでしょう。


さて、上記の数字が確かだとすると、なかなか一筋縄では、成功案件の部類に入ることはできないということになります。その要因の一つとして、やはりこのポスト・マージャー・インテグレーションの困難さがあるといえます。強引に買収を行ったとしても、そもそも企業風土の異なる会社を手堅く運営していくことが果たして可能なのかどうか、本当に買主の保有する既存の会社との間で大きなシナジーが発生するのかどうか、それらの点につき、買主側は、対象会社の選定の時点よりPMIを意識して動く必要があります。特に、人事に関しては、買収により人的資本が離反・流出するリスクを見据えたうえで、PMIの計画を立案する必要があるでしょう。

また、中小企業庁は、令和4年に中小PMIガイドラインを公表しており、これを参考にすることも有用だと思われます。


M&Aトラブルでお困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお気軽にお問い合わせください。

M&Aとは?

多少、今更感もあるのですが、ここで「M&A」という用語に関してもご説明しておきましょう。

M&Aとは、Mergers and Acquisitions の略で、直訳すれば、「合併と買収」ということになります。

もっとも、一口にM&A取引といっても、その類型は多岐に渡ります。一般的なものとしては、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転などが挙げられますが、広義の概念としては、資本提携なども含まれるでしょう。

近年我が国で活性化している中小企業のM&Aは、事業承継や事業再生を主眼とするものが大多数ですので、そこでよく見られる契約内容としては、上記類型のうち、株式譲渡契約と事業譲渡契約になろうかと思います。


M&A取引における契約は、欧米の契約実務(特にアメリカ)の影響を色濃く受けてきた経緯があります。結果、英米法系の契約実務において見られるような、実に詳細な契約条項が用いられることが一般であり、またそこで頻出する表明保証(representations and warranties)や誓約(covenants)などといった用語も、かかる英米法系の契約実務から導入された概念です。


政府主導のもと、中小企業のM&Aが盛んとなる中、資質に欠けるM&A仲介業者が蔓延り、上記の詳細な契約書の雛形をそのままテンプレとして用いて取引がクロージングされる事例が散見されます。

売主も買主も、あるいは仲介業者までもが契約内容の意味を理解できぬまま、当該テンプレ契約書を用いて取引を実施しているのだとすると、これは極めて危険です。後々のトラブルに発展せぬよう、締結前に弁護士などの専門家にチェックを依頼することは必須です。大体の問題は、そこで未然に防ぐことができると考えます。また、不幸にもトラブルが発生してしまった場合には、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお問い合わせください。

M&A支援機関登録制度とは?

M&A支援機関登録制度とは、令和3年8月に中小企業庁により設立された制度です。


これに先立つ同年4月、中小企業のM&Aを推進するための今後5年間の官民の取り組みが「中小M&A推進計画」として取りまとめられていたところ、その中では、①事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A支援機関の登録制度を創設し、M&A支援機関の活用に係る費用の補助については、予め登録された機関の提供する支援に係るもののみを補助対象とすることとする。②登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口も創設する。といった点が、取り組み事項として挙げられていました。こうした背景のもと設立されたのが、M&A支援機関登録制度です。


同制度の現在の登録者数は、実に3000を超えているようです。また登録者の種類も、M&A仲介業者、FA、M&Aプラットフォーマー、税理士、公認会計士、弁護士、地方銀行、信用金庫、信用組合と、幅広い業種が参加しているようです。

これら登録者は、適正な取引ルールが盛り込まれた中小M&Aガイドライン(M&A支援機関を対象としたM&Aに関する指針のことです。)を遵守し、M&A成約の際には、中小企業庁に報告をしなければなりません。


同制度の発足により、中小企業のM&A市場の実態把握と透明化が図られ、中小企業の経営者が安心してM&Aを利用できる環境づくりが期待されていた・・・のですが、ご存じのように、近年M&A支援を業とする事業者が急増する一方で、現状、M&Aを管轄する特定の法律が存在しないことから、一部の資質に欠けるM&A仲介業者が存在しており、トラブルが多発している点は、大きな社会問題となっております。


朝日新聞の報道では、中小企業庁が今秋(令和6年)にもガイドラインを見直す方向で作業に入ったとのことですが、果たして効果的な内容となるか、注目しています。

SPC、PEファンド、LBOとは?

SPCとは、Special Purpose Company の略で、特別目的会社を意味します。


SPCは、SPC法に基づき資金調達目的で設立される会社で、M&Aにおいては、プライベート・エクイティ・ファンドによる買収の際に用いられる場合が見られます。


プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンドともいいます。)とは、複数の機関投資家や個人投資家から資金を調達し、これを投資に充てることにより、未上場企業の経営に参画し、企業価値を高め、最終的にはIPOや売却といったエグジット手法により利益(キャピタルゲイン)を得ることを目的としたファンドです。

 

すなわち、M&Aにおいては、買主となる当事者自らが契約主体となって対象会社の株式を取得する以外に、買主が買収目的で設立した法人(SPC)が契約当事者となって対象会社を買収することがあるということです。


ちなみに、通常SPCは、投資家以外に金融機関からも借入を行いますが、その際、かかる借入の担保として、SPCが買収する対象会社の株式等に担保を設定します。このような資金調達方法を、Leveraged Buy Out と呼びます。・・・何だか横文字の略称ばかりになりますが、「LBO」という用語は耳にしたことがないでしょうか?


そして、かかる借入は、対象会社の事業から生じるキャッシュ・フローによって返済がなされていくことから、最終的にはSPCは対象会社と合併して消滅することが多いといえます(その後、対象会社が当該債務を包括承継します。)。


私も、ファンドの人間と仕事をしたことがあります。中小企業のM&Aではファンドなど関係ないと思われるかもしれませんが、SPCを設立して複数の中小企業を買収するといったケースを実際に知っています。上記LBOを用いることにより、自己資金や資本の少ない企業が、大きな企業を買収することも不可能ではありません。また、何の記事に書いてあったのか失念しましたが、PEファンドは今日、プロフェッショナルな人材にとって非常に人気のある職業として注目されているとかいうことです。


M&Aトラブルでお困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお気軽にお問い合わせください。

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